石工職人の危機!!

数日前に悲しい知らせが入ってきました。

良く知っている加工石屋さんが8月のお盆までで、工場を閉められたという話でした。
親子で事業をされていた石屋さんで、志も高く、熱心に勉強もされて、知識と技術を磨かれていました。

息子さんもまだ若く、30代です。だから余計に次を考えられたのだろうか・・・・・。

急激に冷え込んだ石材業界。埋葬の在り方・祀り方が著しく変化してきました。家族の在り方、教育、先祖祭祀、時代の変化の中で本当に石屋は必要ないのだろうか?

石を切り出し、石を加工する。石を知る職人だから細かいところまで行き届いた説明も出来る。

石を触る事もなく、販売だけの石材店も世の中にはたくさんあり、現在ではその様な形の石材店の方が強い。石を加工する代わりに、次の手を考えられる。

職人はそういうわけにはいかない。ほとんどの時間をこつこつと石と向き合い、加工することに時間を費やす。たしかに変化は遅い。

しかし、私はどちらの石屋の形を見ていますが、石を扱うものとして、守らなくてはならない物づくりの精神と、技術が、そこにあると思います。

今回、辞められた石屋さんも苦渋の決断だったと思います。私も自分の事の様に、辛く、悲しく、厳しく感じます。

昔の当たり前は、今の当たり前ではない。戦前・戦後のほとんどの石屋は、ノミとせっとうで石をはつって、キン!キン!キン!と小刻みにリズムの良い石を叩く音がしていたと思います。今はそんな石屋はほとんどありません。私が知っている限り、技術を持った石屋の方が減っているように思います。

人を認め、仕事(作品)を認め、それを残す。そうして職人は生きてこれました。その人の生き方、考え方、技能、作品は、この世の中の日本には不要なのか。認められないのか。その地域で、何十年・何百年培ってこられた技能・技術の伝承先がまた一つ消えてしまいました。

きっと世の中の人には知られる事もないでしょうが、それがまた悲しく思います。

決断された石屋さんご家族の、新しい明るい未来を心から願って。  合掌

谷本石材 谷本雅一 国際フォーラムへ行くの巻

8/8・9・10と東京国際フォーラムにて、匠の技の祭典がありました。

そこで、全国石材技能士会からの要請で、技能グランプリメダリストという事で加工実演をさせて頂くことになりました。

地元の東京の2人の職人仲間と三重県名張市から私。
地方からは私だけ呼んでいいただき、感謝・感謝です。

造るもの(彫るもの)は、前日まで東京五輪のロゴマークを手彫りしてほしいとの事でしたが、急遽東京都の判断で出来なくなりました。
突然の変更に、前日からバタバタ!!3人で何を造ろうか?と予期せぬ変更に戸惑いました。
3人で話し合い、2020年東京五輪にちなんで五輪塔を彫る事にして、東京五輪塔と文字を彫ろう!と決め、加工しだしました。

3日間、交代で加工して少しずつ進めました。五輪塔部分は順調でしたが、文字でつまづきました。

綺麗な文字を誰が描くのか・・・(笑)

結局、3人の中で綺麗な文字を掛ける人間はいないとという結論になり、都の職員さんに頼むことになりました(笑)

その時は引き受けて頂けたのですが、「やっぱり東京五輪とつくのは・・・・」と言われてしまい、字を彫る事は断念をせざるを得なくなりました。色々と規制と言うか、難しいですね。

なので、五輪塔だけを彫って完成。ゆくゆくはご戒名などを彫れる様に額だけ作って残しました。

3日間、多くの来場者があり、何度も見に来て下さる方もおられ、少しずつの変化を楽しんで頂けたのではないかと思っています。
「かけたら終わりやね・・・。」他の業者の方も見に来て下さり、「石屋さんは大変やね・・・。失敗できない。」と言われていました。

分かってくれますか!?地味~で失敗の許されない仕事。そら職人も減るよね~。

一般の方には、今ではほとんど目にすることのない石工の仕事風景。この技術を次世代に伝承させていく事は、私達の使命だと思いますが、なかなか困難な道が続きます。皆様、どうか応援よろしくお願いいたします!

丸川珠代国会議員と一緒に写真を撮って頂きました。ありがとうございます。

トヨタ2000GT!!かっこいい。憧れます。

みえ県展 結果

少し前の事になりますが、今年もみえ県展に現代彫刻を出展していました。

今年で5回目の挑戦で、昨年は有難いことに「優秀賞」を頂きました。

さてさて今年の結果は・・・・・・

 

 

 

見えました?右下に結果が貼ってあります。

結果は、今年も「優秀賞」を頂きました。

今は谷本石材のお店に展示してあります。

なかなか頂点は難しいですね。これからも挑戦あるのみです。

その「墓じまい」本当にいいの?

最近、「墓じまい」と言う言葉を良く耳にします。谷本石材では、それほど依頼はありませんが、他の石材店では建墓するお墓の1.5倍~2倍近くのお墓を解体撤去処分しているらしい。「そんなに!!」とびっくりしました。メディアではよく目にしますが、実際そこまでとは思っていませんでした。

なぜ「墓じまい」になるのでしょうか?

それぞれ様々な状況があるので、理由も様々ではあると思いますが、いまいち私には理解できない事が沢山あります。
・子供たちに迷惑(負担)をかける。
・管理が出来ない。
・お金が掛かる。
などなど、たしかに何もしないよりかはお金はかかるし、子孫に対しても負担もかかります。それは事実です。

しかし、私達人間は数万年も昔から、亡き人を弔ってきたこともまた事実なのです。
なぜ、人間は今日までお墓を祀ってきたのでしょうか?

私が思うには、感謝の心の表したものが「お墓」だと思っています。

私の祖父は戦争に行き、船に乗っていたところを魚雷で撃たれ沈没し、海に放り出られ、浮いている物にしがみついて過ごしたと聞きました。力尽きたものは海に沈み、サメの餌食にもなったと、幼いころ聞きました。戦争の前線では食べ物もろくになく、大変な思いをして飢えを凌いだと聞きました。私には味わったことのない恐怖と、過酷な毎日です。

そのころの時代と比べてみると、今の時代は天国です。雨・風をしのげ、電気が点り、3度の食事がある。そして、世の中には娯楽があふれています。

2世代前の日本の厳しさと今は違います。しかし、2世代前は先祖祭祀を時間・手間等でやめた人がいたでしょうか?

家を繫げる事、残す事、それが当たり前。そして先祖祭祀も当たり前。祖父・祖母・父・母一人でも欠けると今の私達は存在しません。それを少しでも感じてほしい。

だからといって、高価なお墓は必要ありません。今の自分が出来る限りで十分だと思います。お守り・お祀りする「心」が大切です。

今の不幸を感じるより、今の幸せを感じ、自分たちの一番身近な神・仏であるご先祖様に感謝する。それがお墓です。お墓はただのお骨の収納場所ではありません。

お墓とはご先祖様と、近況や悩み、不安な事や嬉しかった事など様々な事を語らう場です。そして、子孫の道徳教育の場です。

小さいころからお墓参りやお墓の掃除を一緒にしていると、子ども達は自然とお墓を守る、祀るという事を認識します。そうすれば、お墓があって当たり前になります。自分たちのご先祖様を身近に感じ、自分は1人ではないと感じれます。困ったときや嬉しい事があった時に、お墓へ足を運ぶようになります。うちの子どもたちも、定期的にお墓参りやお墓掃除を一緒にしています。今はまだ幼いので喜んで一緒に行きます。幼い事から一緒に行くという事が大事だと思います。

自分たちの生活の中に自然とお墓がある様になります。

形のあるものを片付けてなくすという事は簡単に出来てしまいます。しかし、そのお墓を作られた時の想いや願いを今一度考えて頂きたい。そして未来(子孫)に期待を持って頂きたい。未来への宿題も渡して頂きたいと思います。そして活力のある家づくりをして頂きたいと思います。

お墓に携わっている石屋として想い、願います。

現代彫刻に挑戦中です

今年もみえ県展に向けて、現代彫刻に挑戦しています。

この原石を加工して、新たな作品に生まれかわります。
40年ほど石置場で眠っていた石です。
作業は大変ですが非常に楽しいです!

完成が楽しみです。

5/19(土)~6/3(日)の間に、三重県文化会館でみえ県展が開催されます。
ご興味のある方は是非見に行ってください。

ビックリ!そんなにお金が掛かるの?

霊園やお寺の墓地には「指定業者制度」と言うものがあります。その中にはびっくりする内容がいっぱいあります。

先日、電話での問い合わせがあり、「違う業者さんの所の話で申し訳ないのですが、親の戒名彫りを依頼すると、18万掛かりますと言われたのですが、それくらいかかるものですか?」との事でした。

非常に高い。会社や地域が違えば多少の金額は違いますが、東京でもさすがにそこまでしないのに、奈良の田舎の墓地でそんなにするのか。指定業者になれば何をしてもいいわけではないはずです。価格はそれ相応の仕事の対価です。それも、自分で作業をするわけでもないのに、良くその金額を出せたものだと思います。

しかし、世の中とはそんな物です。東京・愛知・京都・大阪・大都市の大きな寺院はほとんどが指定業者制度です。同業者から見て、納得のいく素晴らしい業者が出入りしているのなら理解できますが、良く分からないマンションに一室を構えているだけの業者や、聞いたことのない名前の業者が多い。

なぜそうなるのかは理由があります。石屋は誰にでも出来てしまうからです。

一般の方は、石を頼むとその石材店が全てをしてくれると思っている方も多いと思いますが、実際はそうではありません。全体の8~9割の石屋は売っているだけいるだけのです。加工も・施工も出来ない。丸投げ状態です。

石屋には、国家検定がありますが、あろうがなかろうが石屋は出来てしまうので、全ての石屋が国家検定を持っている訳ではありません。だから、良く分からない石屋が生まれてしまいます。

それに、お金をつめば指定業者になれるのもおかしいです。だから、真面目に(きちんと技術を持っている)石屋をしている石屋が消えていきます。お金儲けの上手い石屋が残ります。なんだかな~。これが世の中か・・・・。

電話してこられたお客様もきっと、その金額(18万)ですることになるんだろうな・・・。時代の良い時に墓地を決め、お墓をたてるとその時は良かったんだと思います。しかし時代は変化しています。世の中不況です。

私達の業界も、いつまでも心のない事をしていると、もっと墓じまいを加速してしまいます。

石だけでもないし、ましてやお金だけでもない。供養する心を届ける。それが葬送文化に携わっている物の仕事だと私は思っています。

自分の仕事に誇りを持ってやっていきたいです。

小さい五輪塔

お客様より五輪塔のご注文頂きました。

手加工で製作した、高さ40㎝ほどの小さい五輪塔。石は、国産の青御影石。しばらくは庭に飾り、後にご自身のお墓にされたいとの事でした。

まずは手書きで製図させて頂きました。小さいので、一石の方が崩れにくいし、良いのでは?とお話しさせて頂くと、一石だと水輪が笠の下にくっつく部分と、地輪の上のくっつく部分と、水輪の上下の部分が綺麗な丸にならないから、一石ではないものをとの事でした。

もともとこちらのお客様は、昔ながらの五輪塔等を良く知ってくださっている方なので、古いものの一石五輪塔を見て知ってくださっており、そのようなイメージだという事でした。たしかにその通りです。水輪の部分は丸であって丸でない。昔のはけっこう丸ではありません。

そのような経緯から、小さい五輪塔ではあるが、一般的な五輪塔と同じように、4つの部分に分けて作る様になりました。

まだ作っている途中ですが、小さいながらもホゾを作ってささるようにして、崩れないようにしています。穴もホゾも丸。丸にするには理由があります。昔の加工は木材の加工の技術を転用し、四角のほぞ穴でしたが、木はしなるので四角でいいのですが、石はしなる事が無いのでひねると折れてしまいます。その為石は丸になりました。

現在は、擬宝珠と水輪の加工途中です。
 

沓脱石(くつぬぎ石)完成しました。

3/8沓脱石が完成し、設置いたしました。

ご住職がご来店下さってから、5か月以上かかり、ようやく納めることが出来ました。
職人の腕が生きる仕事をさせて頂けたこと、心から感謝しております。

必要として頂けて初めて自分の腕が生きてきます。
「お願いして良かった」の一言で私の生きてきた道が認められたと感じれます。
出会いに感謝・感謝です。

3/10の大般若に間に合うように設置させて頂きました。寄付者の3名の方には1日早く3/9にお披露目と法要があり、大般若の3/10には80名程の檀家さんが大般若法要に参列され、沓脱石も見て下さいました。
寄付者の方々も、もっと小さくて、磨いてあるものが届くと思っていたらしく、「想像以上の物が届いた!」と大変喜んでくださったと聞かせて頂きました。

その後も、寄付者の方から聞いた4~5名の方々が、朝の7:30~「えらいもん入ったらしいな!どれや?」と沓脱石を見に来られたとご住職から聞かせて頂きました。ありがたい話ですね。


また数日後、ご住職より突然電話があり、「玄関の扉を開けた瞬間、沓脱石に夕日が差し込みとてもきれいで感動しました!感動を社長にお伝えしたくて!」とお電話がありました。本当にありがたい。

1日の中でも様々な表情を見せてくれるようです。ご住職にも大変喜んでいただき私も嬉しく思います。

 

沓脱石(くつぬぎ石)手作り製作 ご住職が工場へ来てくださいました。

名張市にあるお寺のご住職からご依頼いただいた、沓脱石(くつぬぎ石)の製作が、完成に近づいてきたので、ご住職に見て頂きました。

 

ご住職は見た瞬間に「これはいい!想像以上です!」と、こちらの方こそ想像以上にありがたいお言葉を頂きました。
「ここで靴を脱ぐのはもったいないから、下でぬいでもらおう」と言われていました。
くつぬぎ石がくつ脱がない石になっちゃいました(笑)

何か製作するとき、自分の感性だけのものでは、御依頼主様に満足していただけないと思っているので、見て頂いて満足して頂いて初めてほっと安心できるので、それまでは毎回緊張です。
今回のご住職のお言葉は、私にとって最高の褒め言葉です。作って良かった。喜んでいただいてよかった。と思える瞬間であり、ある意味この瞬間の為に作っています。

「やりがい」がわたしの原動力です。

近々完成し、設置です。最後の最後まで気を抜かずに、思いを込めて製作いたします。

 

 

業界紙の社長来店

私ども、石屋の業界にも昭和30年頃から業界新聞(日本石材工業新聞)があります。私はこちらの新聞社さんの紹介で、愛知県岡崎市の石材店に修行に行きました。(非常に厳しい修行だったので、その時は後悔していましたが、今となっては感謝しかありません)

私も23年間石屋をしていて、こちらの新聞に何度も載せて頂きました。ありがたいです。今回は、昨年勉強会をご紹介いただき、受講した感想、印象などを聞く為に来てくださいました。

石工職人である私も、経営者の端くれ。生きていく為には様々な勉強が必要なのです。他店の石屋さんの努力も学ばせて頂き、自社に活かす、そんな刺激を頂ける場に行かないと、変化が止まる。時代に合わせた変化が、石屋にも求められています。

職人+経営。とても大切な事です。

他にない石材店を目指してほしいと、言って頂きました。期待されることを楽しみに変えて、これからも頑張るぞ!!!