石燈籠での事故について
先日、とても悲しい事故が起こりました。
石燈籠の擬宝珠(ぎぼし)部分が落ち、一人の尊い命が犠牲になりました。その件について、東京のNHKの方から、燈籠の施工基準についてお問い合わせがありました。
今現在、燈籠に関して明確な施工基準はありません。どのような点に注意して工事をしているのか、ボンドやセメントで止めているのか、等も聞かれました。
その燈籠をネットでみましたが、セメントで止めてあった様に見えました。しかし、経年劣化により、石とセメントが外れたのではないかと思います。
鎌倉時代の燈籠にはホゾがありますが、最近の燈籠にホゾはない事が多いです。ホゾがないと、地震や、負荷がかかったときにどうしても倒れ落ち易くなります。
最近の燈籠にホゾがない事が多い理由は、コストダウン重視、作業効率重視、見えるとこだけ重視等だと思われます。石の量を少なくし、見えない所の加工を省くことにより、コストダウンと作業効率を上げる事が出来ます。
先にも述べましたが、古き良きものにはしっかりとした太いホゾが加工されています。
その時代の石工は、様々な職人の中でも、地位も高く、守られていました。だからこそ、手間暇をかけて、1つの仕事に対し対価をもらうことが出来ました。
近年では、その状況と全く正反対です。
また時代により燈籠も形状の変化があります。もし、その燈籠に、深く、立派なホゾがあったら、今回の事故のような結果にはならなかったかもしれません。
これから、その燈籠は撤去の対象になるかもしれません。その他の燈籠も、撤去と言う事になるかもしれません。
石は、重くて危険。だから撤去しようとなるのは、とても残念でなりません。
何故、その様な事故が起きたのか、防げることはあったのではないか。私たち石工に出来ることは、きちんとした加工を知ること。そして施す事。
文化や技術を守るためには、絶対に手を抜かないこと。それらの事を、一般社会に正しく認知してもらう為に、訴えていくと言う事も、手を抜かないと言う事です。
職人の世界は、大変厳しい状況に陥っています。何千年と培ってきた文化が、消えそうになっています。職人の世界の理解と文化に対する理解が得られるように、啓蒙していきたいと思います。
一人でも多くの方に、耳を傾けて頂けたら幸いです。